従来の自署・押印と電子署名の違い
ここでは電子署名について、どんなものかを従来の紙+自署または押印による手順との対比で説明しています。 必ずしも技術的に正しくない部分もありますが、理解しやすいようにあえて要約して説明しております。 そもそも「電子署名」がどういったものか良くお分かりにならない方は、是非以下の説明をお読みください。
特に、電子署名、電子証明書などの語句を、誤解していらっしゃる方が多いようです。
文書
紙文書

従来の紙で作成された文書です。稟議書、請求書、発注書、請書、契約書、各種仕業の作成した評価書など、様々な紙です。
電子化された文書

従来、紙で作成していた文書の代わりの、pdf 形式のファイルです。Word や Excel で作成したり、不動産鑑定評価書などの場合、専用の評価書作成ソフトで出力する場合もあります。いずれにせよ、pdf 形式のファイルです。
実印
実印

紙に押印する実印です。場合によって自署 (署名) の場合もありますが、ここでは印鑑として説明します。
絵では実印を金庫に入れて保管していますが、これはもちろん、組織による内部規定により様々で、要は人が管理する、ということを表しています。
電子証明書

電子的な印鑑が「電子証明書」です ({電子署名」ではありません)。実体としては Windows のファイルになりますが、電子署名の度にこのファイルを使うことはなく、実際には Windows にインストールし、以後、それを参照して電子署名することになります。
印鑑との決定的な違いは、金庫の鍵に相当する証明書パスワード (時に秘密鍵パスワード、PIN などと呼ばれます) が証明書ファイル自体についていて、このパスワードを知らないと電子証明書を利用できません (電子署名ができません)。
押印
押印 (または自署)

紙に人の手で押印 (あるいは自署) する行為です。
電子証明 (する)

押印の代わりに、電子化された文書 (pdf) に実印に相当する電子証明書で電子署名する行為を指します。単に「電子署名」というと混乱を招くため「電子署名する」「電子署名を付す」と言った方が正確でしょう。
印鑑の場合は人の手で行いますが、電子署名の場合は「電子署名のためのツール」が必要になります。最も利用されている電子署名ツールが Acrobat (Reader) であり、他に PDF XChange Editor や、当社が無償提供する 1-2-3 Signature などがあります。
押印済み完成文書
押印 (または自署) 済み文書

押印された紙文書です。これがいわゆる「原本」となり、コピーしたものは「複製」となります。
電子証明済みファイル

電子署名を付された pdf で、これが「電子署名付き文書」であり、pdf ファイルそのものが原本となります。
紙文書との最も大きな違いは、pdf ファイルをコピーしたものは内容が全く同じですので、コピーしたものも原本です。複製という概念はありません。
真実性の確認
印鑑証明
押印された紙文書が正当なものであるかどうかは、一般的に印鑑証明書を取って印影を確認します。 別の言い方をすれば、真実性は印鑑登録を受け付けた役所、あるいは法務局が保証することになります。
電子証明の検証
電子署名された pdf ファイルが正当なものであるかを確認するには、「署名の検証」という機能を用います。 署名の検証は Acrobat (Reader) をはじめ、様々な pdf ツールで可能です。
実印の場合、真実性は印鑑証明書で確認しますが、電子署名の場合は、電子署名に用いた電子証明書の確からしさ (真正性と呼びます) で決定されます。このため、電子証明書は発行にあたり、十分な本人確認などをした上で発行された、確かなものを使う必要があります。 世界標準規格に則って、身分確認の上で発行された電子証明書は、パブリック証明書と呼ばれます。
pdf 上で電子署名はどう見えますか?
以下は 2名の署名者によって電子署名された pdf を、Acrobat Reader で開いた場合の見え方です。

電子署名の本質
電子署名法上の電子署名とは、pdf に埋め込まれた電磁的情報です。Acrobat で pdf を開いた時に、画面上では見えません。 Acrobat の場合、右上に [署名パネル] というボタンがあります。これをクリックすると、上図①の様な情報が右側に展開されて表示されます。 これは、pdf 内に埋め込まれた電子署名の電磁的情報であり、また、その内容が正しければ画面左上に「署名済みであり、すべての署名が有効です」と表示されます。
また①の中の赤線部分に「署名は LTV 対応です」と表示されています。これは「LTV: Long Term Validation = 長期検証」という機能で、 電子署名に用いた電子証明書の有効期限が切れた後も、正しく検証 (pdf の署名が正しいことを確認する) できるようにするための機構です。 実際にこの文書は 2023年 10月に電子署名されたものであり、電子証明書の有効期限は切れていますが、正しく検証できています。
可視署名と不可視署名
上図では、同時に②のように画面上でも電子署名の概要が表示されています。 実際に Acrobat で②の署名部分をクリックすると、①と同じ内容が確認できます。 ただし、②が電子署名の本質ではありません。誇張して言えば、これは画面で見た時に、電子署名内容を目視し易くするためのものに過ぎません。 特に②には自署画像で署名者のサインが表示されていますが、これは単なる画像ファイルを表示しているに過ぎず、何の意味もありません。 署名サインの代わりに印影画像を用いることもできますが、やはり意味を持ちません。 ②をもって「電子署名」と思われる方が多いようですが、電子署名法上の電子署名は、あくまで①の情報です。 このことから、上図のように自署画像や印影を用いる必要もなく、氏名が必要であれば単に文字として氏名を通常の文字で書いておけば十分です。 繰り返しになりますが、電子署名では本人確実性は①の情報で判断するものです。
よって、②部分の表示がなくても電子署名法上の有効な電子署名と解釈されます。②がない署名方法を「不可視署名」、②がある署名方法を「可視署名」と言います。
可視署名と不可視署名、どちらを使うべきか
電子署名法上は、不可視署名であっても要件を満たします。ただし、利用用途によって「可視署名」が求められるケースもあります。 例えば役所への提出書類などでは、役所の判断で「可視署名が必須」と指示されるケースもあり、このようなケースでは提出先が何を求めているかを確認する必要があります。 また、文書の受け手が簡単に視認できるように、という配慮をするのであれば、可視署名を用いた方が良いでしょう。